MudRetsu
桜梅桃華@女装・TSF小説
桜梅桃華@女装・TSF小説

fanbox


メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち:7

女友達

朝。凜のアパートの玄関の前で、最後のチェックをしていた。

ピンクの千鳥柄のワンピース。

淡いベージュのカーディガンを羽織ると、全体がやわらかくまとまる。

今回は地雷系ではなく“甘可愛い”ファッション。

凜が通販でこっそり買っていたコーデだった。


「ね、可愛いよ。今日も」

背後から覗き込んだ凜が、僕のウィッグを指で整える。

その仕草に、胸がぎゅっとなる。


外に出ると、朝の空気が少し冷たい。

大学までの道を並んで歩く間、僕は視線を落としたままだ。

スカートがひらりと揺れるたび、誰かに見られている気がして息が詰まる。


凜はそんな僕の手を取って、軽く指を絡めた。


「大丈夫。緊張しなくていいよ」

その言葉は、慰めのようで――命令にも聞こえた。

手のひらの温かさが、支配と安心を同時に染み込ませてくる。


彼の隣で歩く“彼女”としての一日が、また始まる。


◆


講義室に入ると、凜の友人たちがもう集まっていた。

笑い声と香水の匂いが混ざる輪の中に、僕は小さく息をのむ。


「おはよー。ちょっと紹介したい子がいるの」

凜が、当然のように僕の背に手を添える。


「啓斗。ついこの間まで彼氏だった。今は彼女に変わったの」


一瞬、時間が止まった。

けれど次の瞬間、ざわめきが弾ける。


「えっ、彼女って……啓斗くん!?」

「男の子やめちゃったの!?」

「でも似合ってるじゃん!」

「てか、可愛い〜!」


驚きと笑い、そしてほんの少しの好奇心が、波のように広がっていく。

誰も否定しない。誰も疑わない。

――それは、彼女の凜がそう言うのだから“そうなのだ”という、優しい同調の空気が浸透していくのを感じた。


僕はうまく笑うしかなかった。


「……僕がこんな格好……変だよね」

と口にしても、


「変じゃないよ」

「今どき普通だし」

「凜がいいならいいじゃん」

――まるで世界のほうが、僕の“女の子”を肯定しているみたいだった。


凜は僕の肩にそっと手を置く。

その瞬間、周囲の視線が“彼女”としての僕を固定した気がした。

演技のはずなのに、息ができないほど現実的で、

でも同時に少しだけ、安心してしまう。


凜の隣で笑うたびに、

“否定”の言葉が喉の奥で溶けていった。


◆


昼休み。学食の奥のテーブル。

僕と凜は女子が集まる輪の中に呼ばれた。


「ねえ啓斗ちゃん、そのカーディガン可愛い!」


凜の友達、白のブラウスの赤いスカートを穿いた“真白”が目を丸くして言う。

僕は思わずスカートの裾を押さえた。


「……凜が、選んでくれて」

そう答えると、真白はにこっと笑った。


「やっぱり!凜、見る目あるもんね。ねぇ、今度三人で下着見に行かない?新作出てるし」


「えっ……」

フォークを落としかけた僕を見て、女子たちがくすくす笑う。


「いいじゃん、行ってきなよ」

「そんなに驚かなくても〜。今どき、友達同士で行くよ?」

「サイズとか測って貰えるからね。通販よりお店の方が絶対いいって」


凜は軽く笑って、僕の手を取った。


「行こうよ、啓斗。真白なら私も安心だしいいでしょ?」


彼女の指が僕の指を絡める。


「いつまでも私のお古じゃダメでしょ」

耳元で小さく囁いた。


「……う、うん。じゃあ……」


その言葉が出た瞬間、

まわりの女子は嬉しそうに「良かったね」と声を上げた。


メイク、ファッション、ネイル。

話題が次々と移るたび、僕の中の“男子”の輪郭がかすんでいく。

笑いながら相槌を打つ自分の声が、少し高く、少し柔らかく響く。


テーブル越しに見た凜の笑顔は穏やかで――

まるで僕が“彼女”であることを、みんなに誇っているみたいだった。


◆


昼食のあと。

なんだか胸が苦しくて、僕は凜に付き添ってもらい、多目的トイレに入った。


鏡の前に立つと、息が止まる。

カーディガンの袖を伸ばし、萌え袖にする。

ワンピースの襟元から覗く鎖骨。

ロングのウィッグが頬を撫で、唇には、朝つけた淡いピンクのグロス。


――違和感が、ない。


その事実に、心臓がきゅっと縮む。

恐怖と、熱と、奇妙な安心が同時に押し寄せる。


「啓斗」


背後から、凜の声。

振り返る間もなく、背中に彼の腕が回った。

鏡越しに見える、二人の姿。

まるで“女の子同士”そのもの。


「いきなり女子の輪の中に入ったから、びっくりしちゃったかな。もう誰も、啓斗を“男”だなんて思ってないよ」


脳に直接語りかけられるような、甘く優しい声に、僕は落ちていく。

否定しようとした唇が、何も言えず震えた。


凜の手のひらの温かさが、

“彼女”としての僕を確かに形作っていく。


もう僕は、“凜と一緒にいられるなら彼女でもいい”――

そう思ってしまった。自身の女の子を肯定してしまった。

甘い崩壊の音が、胸の奥でそっと鳴った。


――第8話へ続く。

メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち:7 メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち:7 メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち:7

More Creators