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桜梅桃華@女装・TSF小説
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メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち:8

下着屋さんデビュー

ショッピングモールの二階。

ガラス越しに見える店内は、可愛いを詰め込んだ宝箱みたいだった。

ピンク、ミント、クリーム。

ふわふわの照明と、花びらみたいな布たち。

――ここが、“女の子の下着屋さん”。


「さ、行こ」

凜が僕の袖を軽く引く。

その動きだけで、胸の奥がざわめく。

隣の真白はスマホをしまいながら笑った。


「男の子一人じゃ入れないよね〜。でも今日は女の子二人と一緒だから安心でしょ?」


「んっ……ま、まぁ……」

思わず小声になる。

通りかかった女の子二人がこちらをちらりと見て、思わずうつむく。

でも、凜はそんな僕の気持ちを察したのか、手をしっかり握っている。


「大丈夫だよ。ね?」

その一言で、足が勝手に動いた。


◆


店内は、やさしいアロマの匂いが漂っていた。

棚に並ぶのは、レースとリボン。

淡い光の下で、ショーツやブラがまるでアクセサリーみたいに輝いて見える。

“下着”というより、“可愛い”が並んでいる。


――どうして、こんなに心が躍るんだろう。


心のどこかで、これは“僕のものじゃない世界”だと知っている。

それでも、視線が自然と惹かれていく。


「……ふふっ、嬉しそうだね」

いつの間にか隣に来た真白が、口の端を上げて言う。


「そ、そんなこと……」


「顔、にやけてるよ?」

凜もくすっと笑った。


「やっぱ可愛いの好きなんだ。ほら、この水色のとか似合いそう」


からかわれてるのに、否定できない。


「じゃあ、サイズ測ってもらおっか」

凜の言葉に、心臓が跳ねる。


「さ、サイズ……?」


「大丈夫。ここ、優しい店員さんばっかだから」


そのまま凜は店員さんを呼んだ。

黒髪にウェーブがかかった、落ち着いた雰囲気の女性。

穏やかに微笑みながら、


「いらっしゃいませ。ご試着ですか?」


「はい。この子、心が女の子なんですけど、今まで下着を着けたことがなくて。採寸、してもらえますか?」

凜が自然にそう言った。


その声に、僕の胸がきゅっと縮む。


――心が女の子。


その言葉が、まるで肯定の印みたいに響いた。


店員さんは少しも驚かず、にっこりと微笑んだ。


「もちろんです。こちらへどうぞ」


◆


案内されたのは、フィッティング用の小さな部屋。


「じゃあ、測りますね。リラックスして」


店員さんがメジャーを手にする。

その仕草は、まるで美容師のように優雅だった。


「まず、トップバストから測ります」


メジャーが胸の上をなぞる。

服越しとはいえ、胸の形を意識してしまい、呼吸が浅くなる。


「息を吸って……止めてください。……はい、ありがとうございます」


短い沈黙。

指先が軽く当たるたびに、心臓が音を立てた。


「次はアンダーバストです」

今度は胸の下を通る。


ひんやりとしたメジャーの感触が肌を撫で、

“計られている”という事実が、奇妙にくすぐったい。


「……女性ホルモンは摂取されていますか?」

唐突な質問に思わず店員さんの顔を見た。


「えっ、いえ…特に……」


「そうですか。元々、お客様は体内のエストロゲンが多いのかもしれませんね。トップとアンダーの差が10cmありますので、しっかりAカップありますよ」

その一言に、顔が熱くなった。


“Aカップ”――その言葉を、男の僕に向けて言われるなんて。


恥ずかしいのに、なんだか嬉しくて、

息をするのを忘れそうになった。


「はい、終わりました。少しお待ちくださいね」


◆


カーテンの外に出ると、凜と真白が並んで待っていた。

二人とも、まるでファッションショーの結果を聞くみたいな顔をしている。


「どうだった?」


「……その、“Aカップ”って言われた」

そう答えたら、凜が嬉しそうに笑った。


「やっぱり。前から何だか膨らみがあるなって思ってたの。Aカップもあると思わなかったけど」


凜も頷いて、


「自覚してこ。啓斗くんは“女の子の才能”があるんだよ」

その時、店員さんがブラをいくつか持って戻ってきた。


「こちらが今のサイズに合うものです。どれも着け心地が柔らかくて、人気ですよ」

手にしたトレーの上には、淡いピンク、水色、黒色に赤色のブラ。

小さなリボンが、きらりと光っている。


「ほら、啓斗。どれが一番“きゅん”と来た?」

凜の言葉に、思わず息を呑んだ。


“きゅん”なんて言われても……。

けど、目が勝手に動いた。


ピンクと、水色。

ふわふわしたレースが、どちらも優しくて。

指先で触れたとき、心の中に小さな音がした。


「……これ、が……いいかも」


「可愛い系が好きって、やっぱ女の子だね」

真白が手を叩く。


「そ、そんなこと……ないよ……」

言いながらも、口元が緩んでいた。

それを見た凜が、ふっと笑う。


「じゃあ、それ買おっか。初めての啓斗の下着だし。私からのプレゼント」

“初めての自分の下着”――その言葉が、胸の奥に響いた。


◆


モールを出る。

ショッパーの中のピンクと水色が、歩くたびに擦れ合って音を立てる。

手に持つその軽さが、なんだか信じられなかった。


「ねぇ、啓斗」

凜が隣で囁いた。


「女の子って楽しいでしょ?」


「……え?」


「みんなで可愛い下着やお洋服を選んだり、おすすめのコスメの話をしたり……男だったらこの楽しみってわからないよね」


そう言って、凜は僕の手を握った。

その手の温かさに、

“女の子として扱われる”という現実が、優しく沁みていく。


気づいた瞬間、頬が熱くなった。

でも、嫌じゃなかった。


凜が笑う。

「大丈夫。次も一緒に行こう」


その声にうなずくと、

僕は小さく息を吸って、笑った。


――第9話へ続く。

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